【実食レビュー】日本料理店『佳肴 季凛』の西京漬け。店主が目利きした上質なサーモンをオーガニック味噌床で熟成。深いコクと甘みがおいしい
日本料理は全然詳しくないけれど、西京焼きは知っています。そこから湧き上がるイメージは、「高級」「料亭」のようなセレブリティなものばかり。自宅で食べるごはんというより、旅行先の旅館で出てくる上品な焼き魚という印象。
今回、静岡県の日本料理屋さんが仕込む贈答用の西京焼きを食べる機会をいただきましたので、その味、香り、様子など、たっぷりレポートしたいと思います。
▼こんな人におすすめ
- そもそも西京焼きって何?
- 料亭のお取り寄せ西京焼きの味を知りたい
西京焼きって、何?
まずは、おいしく食べるためにも、西京焼きとそのポジションを確認したいと思います。
西京焼きとは、
「京都名産の西京味噌を使った味噌床に、旬の魚や肉の切り身などを漬け込んでつくる、京都の伝統料理」
です。
西京味噌は、関西地方の白味噌のことで、塩分少なめで甘めなのが特徴。
日本料理の献立において、「焼き物」に入ります。ただ、日本料理と一口に行っても、会席料理、精進料理、懐石料理とメニューに違いがありました。知らなかった…。
↓画像の出典元
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/meeting/4/pdf/4than02_kyoto.pdf
会席料理はお酒を楽しむもの、懐石料理はお茶を楽しむものと目的が違うのに、発音は同じ「カイセキリョウリ」。これは違いを知っていないと、聞いただけで判断できない…。
あ、でもどちらにも「焼き物」はありますね。
焼き物は11種類あります。
・塩焼き---シンプル。塩のみ。
・柚庵焼き(ゆうあん焼き)---肉や魚を漬けて焼く。漬け床はみりん・酒・醤油・ゆず輪切り
・味噌焼き---味噌に漬けたり、味噌を塗ったりして焼く(←西京焼きはここに入る!)
・照り焼き---肉や魚を合わせ調味液につけて照りを出して焼く。甘辛い味
・黄身焼き---イカや白身魚を白焼きし、卵黄の調味液を塗って乾かし照りを出す
・雲丹焼き---イカや貝柱、白身魚を焼き、練りウニを塗る
・若狭焼き---淡白な魚に、だし・酒・醤油の若狭地を塗りながら焼く
・鍬焼き(くわやき)---鶏肉や鴨肉、野菜をみりん・醤油のタレに絡めて焼く
・包み焼き---アルミホイルや和紙に包んで焼く
・乗せ焼き---材料に別の材料を乗せて焼く
・挟み焼き---2種類以上の材料を交互や順不同に挟み込んで焼く
名前を見たときは、塩焼きや照り焼きくらいしかやったことないなと思ったけど、詳しく中身を見ていくと、鍬焼きや包み焼き、乗せ焼きや挟み焼きなども作っていました!
ここまでをまとめると、西京焼きは日本料理の「焼き物」において、味噌焼きの一種類、です。
味噌づくりは時間がかかり、豆も麹も塩もたくさん使います。味噌を作るのが今よりずっと大変だった時代は、味噌漬けはとても高価な食べ物で、身分の高い人しか口にできないものでした。一般に広がったのは室町時代(1336〜1573)の中期ころ、らしいです。
西京味噌の歴史は今から200年前に始まったようで、西京焼きはこの頃からなのかな。それとも、西京味噌だと認識される前からあったのか、その辺りはわかりませんでした。
西京味噌について|株式会社西京味噌の西京漬け用味噌
おうちに届きました
真空パックにたっぷりのサーモン。魚の姿が少ししか見えないほど、たっぷり漬かっています。漬け床は、有機JAS認定の西京味噌を日本酒とみりんでのばし、田舎味噌を混ぜてコクを深めて作り上げるそう。
これはモニターお試し用の西京漬けで、サーモンの切り落としを使っていて、形や大きさはバラバラです。販売している商品ではありません。
西京漬けはナイーブなので、店主手書きのアドバイスも同封されていました。
・味噌はしっかり落とすこと
・魚焼きグリルで焼くこと(フライパンにオーブンシートをひいて焼くとかNG)
・弱火で焼くこと
店主の西京漬けへの並々ならぬ思いが伝わってきます。
焼きましょう
では早速焼いてみましょう。
パックを開封して、味噌を水で流します。
「味噌を流しちゃうの? もったいない‥」と思いましたが、おいしく食べるために、アドバイス通りにします。しっかり漬けてあるので味噌を水で流しても、味が損なうことはないそうです。
味噌の衣をはがすと、ピンク色で艶っぽいきれいなサーモンが出てきました。魚焼きグリルに、お互いがくっつかないように並べます。
そして、弱火に設定して、じっくり待ちます。
いただきましょう
焼けました!
サーモンにあぶらがのりまくっていて、ツヤツヤです。
このサーモンはノルウェーの養殖もので、抗生物質などを含まないエサを食べ、自然に近い環境で育ったそうです。店主自らが沼津魚市場で目利きしている選ばれしサーモン♪
では、箸を入れてみます。
香ばしい香りと、ツヤツヤの見た目。これは絶対おいしい。
うまーい!
塩焼きの魚も好きなんだけど、これはもう、焼き魚と呼ぶのがはばかれる洗練された料理です。
甘味のある西京味噌でじっくり漬けたことにより、サーモンが持つあぶらのコクを引き出していて、とってもオイリーなのに、まさにその部分がごちそう。サーモン全体に絡みついているおいしいあぶらをまとった身も、もちろんおいしい。香ばしい香り、複雑味のある上品な甘み、ホロホロに崩れる食感。最高です。
店主が西京漬にかける情熱
店主がいかに西京焼きに力を入れているのかがわかるエピソードを、HPで発見したので紹介します。
▼修行先の日本料理店で西京焼きを食べた時の店主
「そこで食べた西京焼は素材本来の味が失われることなく、西京味噌に漬けることで、素材から料理へ、変貌した」
▼店主の西京焼きへの思い
「“刺し、焼”への追究こそが、自分が目指さんとする日本料理」
「鮮魚と味噌だけで作られた西京焼というのは、そういう意味では素材そのものを味わう料理であり、自分の信条を写した鏡とも言える料理」
うん、うまいわけです。
こちらの熱い思いを持った店主のお店は、「マクロビを掲げる日本料理店」。標榜してくれるとわかりやすくていいですね。マクロビマニアはCheck it out!
kakoh-kirin.jp
・オフィシャルサイト
【佳肴 季凛】富士市 心と体に優しい日本料理の店
まとめ
私が料理で好きな味付けは「塩」。だから塩焼きの魚が一番好きでしたが、西京漬けは超えてきました。サーモンと味噌と酒とみりん。素材はたったこれだけなのに、発酵食である西京味噌に漬けることで複雑な旨味が生まれ、洗練された一品料理になっていました。本当においしかった。
ぜひ一度、この味を試してほしいと思います。