[ Yamabukiの食と旅と体の探究ブログ ]

ハロー。ここは「食と旅、ときどき病気」について語る30s女の小さな部屋です。素敵な食べもの、国内外の旅記、影響力のあった読書、肝臓まわりの体験記がブログのトピックです。うまい例えを言えたときにテンションが上がります。

【実食レビュー】江戸時代からつづく富山県の郷土料理。うまみの濃いねっとり食感の『活〆平目昆布〆」でおうち乾杯!

大好きな飲み屋のお品書きに見つけた『なまがわき』の五文字。注文すると、細切りにされた半透明の刺身がちょこんと出てきました。食感はねっとり、味は奥深いうまみで日本酒に抜群に合う肴。聞けば、魚の昆布〆を味噌で漬け込んだものだそう。昆布〆って、すごい…。日本酒を飲めるようになったからこそ知った、初めての味でした。

また食べたいなぁと思っているのに、それ以降、都内の居酒屋では昆布〆に出合ったことがありません。たしかに、刺身を昆布に挟んで数日おく料理は、時間もコストもかかりそうだしなぁ。半ば諦めていましたが、コロナでおうち時間も増えて、頻度が増えたのが「お取り寄せ」。そうか! 本場からお迎えすればいいのか! というわけで、


今回は、富山県の『活〆平目昆布〆』をいただきます!


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歴史が生んだ昆布〆の技法

実は私、うまいうまいと昆布〆を食べておきながら、富山県発祥の伝統食であることを知りませんでした(すいません!)。

昆布〆の始まりは古く、江戸時代まで遡ります。当時、北海道と大阪を結ぶ日本海側の海路がありました。2拠点だけを行き来するのではなく、途中の港でも売り買いをする商社のような船群「北前船」によって、北海道の昆布が富山県に伝わります。冷蔵技術が発達していなかったなかで、魚の保存方法として昆布〆が考案された、というわけです。


▼参考「北前船KITAMAE 公式サイト」
www.kitamae-bune.com



食材のうま味を高める昆布〆は、今では魚だけでなく肉や野菜にも応用される料理手法となりましたが、そもそもは保存食として誕生したんですね〜。




富山湾は魚にとって最高の住まい

富山県ってホタルイカ・白えび・寒ブリが有名で、海の幸がおいしいイメージがあります。その理由は、能登半島が出っ張って、プールのように海が囲まれている富山湾の地形にあるようです。

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「天然のいけす」と呼ばれる富山湾のかたち

温かい対馬海流と冷たい海洋深層水が層をなしてプランクトンが豊富に育つこと、立山連峰からの伏流水が流れ込んで酸素や栄養が供給されること、大陸棚が狭いために深い海底谷が海岸近くまで迫って魚の住まいになっていることなどが重なった海の環境は、「天然のいけす」と呼ばれるほど。日本海の複雑な潮流で、身が引き締まって脂がのったおいしい魚がたくさん獲れる…なんて聞いたらもう、富山県に住みたくなります。

新鮮な魚が近場でとれるならば食文化にも根ざすでしょうし、漁場が近いというところも昆布〆が生まれた背景かもしれませんね。

富山県は関東からは遠くて二の足を踏んでいましたが、2015年に北陸新幹線ができて近くなったことを忘れていました。東京から2時間弱で行けるようになったんだ、行きたいなぁ。




2度〆られた平目は、うま味をため込む

今回食べた『活〆平目昆布〆』について、いったん整頓します。だって、「〆」が2回も出てくるからね。

まず「活〆(いけじめ)」とは、魚のおいしさを逃さない処理方法のことです。釣ったら早めに、刃物を使って血抜きをするのだそう。氷水に入れる野〆(のじめ)と比べると、一匹ずつ行うために手間がかかります。

活〆によってうま味を閉じ込めた平目を、刺身にして昆布で挟みます。余分な水分を吸収させるとともに、昆布の香りやあま味を魚に移して、『活〆平目昆布〆』の完成です

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昆布に挟まれる平目、中身が一切見えない


海と、まな板の上。
2度〆られた平目は、本来持っている魚のうま味に、昆布のうま味も掛け合わさり、素材の良さを最大限に引き出したシンプルで濃厚な料理に仕上がります。




ようこそ、我が家へ

冷凍で到着した『活〆平目昆布〆』は、思っていたよりも重たいです。1日かけて冷蔵庫で解凍したのがこちら。魚は完全に隠れているので、外からは湿った昆布にしか見えません。

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平目昆布〆の見ため


ゆっくりゆっくり昆布を剥がしていきます。


ぺりぺりペり〜。

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剥がすときに糸を引くのは、昆布の性質なのでお間違えなく。刺身と昆布はかなり一体となっていて、箸で取りにくかったので、手で剥がしました。刺身の段は3段。びっしり並んでいて、一切れが大きいです。

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一枚ずつが大きい平目。この下にまだ2段もある

江戸時代の食べ方でいただく

わさび醤油や生姜醤油でどうぞ、と案内がありましたが、調べてみると江戸時代では「煎り酒」という調味料につけて昆布〆を食べていたそうです。また醤油の味が強いため、わざわざ煎り酒を出している富山の飲食店も見つけました。

私も煎り酒で食べたい…。つくることにします。


日本最古の料理書といわれている『料理物語』(1643年発行)の煎り酒レシピには

 「煎酒」は、鰹(削節)一升に梅十五(か)二十入れ、古酒二升、水ちと、
 たまり入れ、一升に煎じ漉し、冷やしてよし。

と書いてあるそうですが、


わかりにくい。

現在に翻訳してくれました江戸料理文化研究家の車浮代さんのレシピで作ります。



<レシピ>
・日本酒200ml
・梅干し 大1
・塩 少々
・鰹節 1.25g(1パック)

<作り方>
日本酒、梅、塩を入れて日本酒が半分になるまで弱火で煮詰める。鰹節を入れて5分煮る。荒熱をとって濾したら、完成。
参照:
煎り酒の作り方と使い方。江戸時代の万能調味料のレシピ。 | やまでら くみこ のレシピ

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日本酒と梅と塩を入れて煮詰めて、
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鰹節を入れて煮詰めて


できたのは、梅の酸味が聞いたとろりとした黄金色のたれ。
思っていたより簡単でした。

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煎り酒の完成です

いざ、実食!


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昆布〆を並べて、煎り酒をつけて、

ぱくっ。

おぉぉぉ〜、おいしい。昆布の香りと味、すごく移っています。食感もねっとりして、いい。

試しに醤油でも食べてみました。うーん、たしかに醤油が強い。昆布の風味はするけど醤油に隠れてしまう。私は煎り酒派です。

日本酒に抜群に合います…。うますぎる。


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カルパッチョ風でワインといただく

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オイルをかけてカルパッチョ風に


北海道夜市のスパークリングワインがあったので、オイルを足して、カルパッチョ風にしたら、これまたおいしい。

昆布を細切りにして、エゴマ油を回しかけ、煎り酒をまぶします。おいしい〜〜。日本酒ならそのままで、ワインならオイルありで、たったこれだけの違いですが、お酒との相性が抜群にいいです。

そういえば自分で昆布〆を作ったとき、昆布に移った魚の生臭さを感じて、昆布までは食べませんでした。でもこの昆布〆の昆布は、そのまま食べてもおいしいことにびっくり。生臭くありません。鮮度の良い魚だからなんだなと、実感します。




まとめ

本場の昆布〆は、透明感のある味がおいしい。生臭さをみじんも感じないので、昆布まで食べられました。またコストパフォーマンスの面でも良いです。昆布〆にすると、水分が抜けるので刺身の状態よりも小さくなってしまう。でもこの昆布〆は、大きめの切り身がビッチリ3段入っていたので、たくさん食べられました。富山名物のしらえびの昆布〆も食べてみたいし、富山県にも行ってみたい。むくむくと、富山への興味が増すばかりです。
おうち居酒屋が好きな方はぜひ、『活〆平目昆布〆』をお品書きに加えてみては、いかがですか。




商品詳細

商品名:ヒラメ昆布〆 約200g
原産地:平目 (岩瀬産)
賞味期限:商品に記載、解凍後は要冷蔵にて3日以内
保存方法:要冷凍(-18℃以下)

www.gohonsuisan.com