【BOOK】マンガでわかる!質問力(谷原誠)
「なぜ?」を連発していた私は、
質問力がない人でした。
書籍タイトル:マンガでわかる!質問力
著者:谷原誠
出版社:宝島社(2017年7月)
この本はを一言で。私にとってどんな本?
「質問できると勘違いしている人の目を覚まさせて、良い質問の仕方を教えてくれる本」
▼こんな人にオススメです
- 熱心に質問していたら尋問されているみたいと言われた
- 相手から欲しい答えがなかなかもらえない
- 答えが出るまで「なぜ?」を追求すべきだと思っている
- 質問に答えられないのは、相手の考えが浅いからだと思っている
- 話していたらいつの間にかケンカになった
悲しいことに、上記の5つの例は、すべて私の経験です。
質問はしないより、した方がいい。質問が浮かぶ私は、質問ができる人だ。
そう思っていたのですが、深夜に友人とケンカになってしまったのをきっかけに、自分の発言を見直すことにしました。
そんな時に出会ったのが、この本です。読み終わってわかったのは、私は質問をする人ではあったけれど、「いい質問ができる人」ではなかったということ。会話がもつれる理由は、私の聞き方にあったのです。
「相手を変えることはできないけれど、自分は変われる」
自分を変える、つまり、自分の考えと行動を変える。
鋼の意志がなければできないことだと思っていましたが、質問力のメソッドにならって、聞き方を考えて相手と接すれば、自然と自分も変わっていけるだろうなと感じています。
それほど質問は、よいコミュニケーションを築くための根幹であり、影響が大きい力です。
では、この本から得たナレッジをまとめてまいりましょう!
質問力は必要か
「質問力」は、人に話を聞く職業のアナウンサーや編集者など特定の人に必要であるかのように聞こえますが、
「何食べる?」 「元気?」 「昨日どうだった?」
など、日常会話にもたくさんの質問が飛び交います。
無意識にしている質問によって、人間関係も自分の印象もいつの間にか決まっていく。
やばい、とても重要な力じゃないの…、と危機感が芽生えました。
何のために質問をするのか
はじめに、質問をする目的をクリアにしておきたいと思います。
広辞苑によると、質問とは「疑問または理由を問いただすこと」とあります。
何かを知るために相手に尋ねる会話、これが質問です。
<質問の目的>
何 を :知らない情報、相手の気持ち
どうする:知るため、確認するため
もし、質問をしたのに欲しい情報が入手できなければ、その質問は目的を果たせずに、意味がなかったことになりませんか。
一方的な質問をした結果、友人を不快にさせてしまい、ケンカ別れになった経験もある私にとって、このマインドセットは非常に重要でした。質問はとにかくすればいいのだと思っていた前提が、そもそも違ったのだと。
- 心の奥にある気持ちを聞き出したい
- 私の意見に共感してもらいたい
- とりあえずこの場をやり過ごしたい
質問をする目的は何でもいい。ただ良い質問、つまり欲しい情報を入手できる質問をするためには、何を得たいのか、どうなりたいのかというゴールを設定して、そこに会話を導いていくイメージが必要でした。
<よい質問とは>
相手が心地よい状態で、自分の求める答えや情報をくれる質問
考えるスイッチを勝手に押す
なぜ、こんなにも質問の仕方を考えなければならないのでしょう?
なぜなら、人間は質問されると、反射的に考えてしまう生き物だからです。
ほら…
たった今、私が2行前にした質問を読んで、あなたも少し考えてしまいませんでしたか?
質問を受けて脳が勝手に考えてしまったのです。
質問は考え始めるスイッチになる。
質問をどう投げるかによって、考えの方向が変わっていく。
だから、うまく質問ができれば、相手のコントロールもできるようになります。
自動的に質問で起動してしまう人間の脳。
その反応には順番があります。まず感情が、次に理性が動きます。
感情 >うれしい、楽しい、悲しい、ムカつく、驚き、嫌だ、怖い
理性 >感情をうけて、状況を考慮して、どう動くかを決める
例:ウインドーショッピングでかわいい洋服を見つける。
店員「よくお似合いですよ」 私「かわいいなー、ほしい!」(→感情)
店員「この色はこの店にしかないんですよ」 私「高いけど今を逃すと出会えないかも」
店員「通気性がいいので夏も使えますよ 私「2シーズン使うと考えれば許せる値段かな」(→理性で買う理由を調整している)
同じ意図の質問であっても、聞き方が攻撃的で相手のネガティブな感情を刺激してしまうと、返ってくる答えは影響を受けます。「答えない」という結論が弾き出されてしまうことも。
よい質問をできるようになるために、まず悪い質問を知ることから始めましょう。
<質問は考えるスイッチを勝手に押す>
人間は、質問されると自動的に考えてしまう生き物。
質問を受けると、感情→理性の順に動く。
してはいけない悪い質問
悪い質問とは、相手が不快になり、積極的に答えたいと思えなくなる質問のことです。
悪い!質問7パターン
1)否定語の入るQ 「どうしてできないの?」「なぜ片付けないの?」「…ないの?」
2)回答直後に否定するQ 「どう思う?」(回答)「私はそう思わないな」
3)答えを求めないQ 「何度言えばわかるの?」「いつまでやるつもり?」
4)脳に負担がかかるQ 「私はどうすればいいでしょう?」「なぜ…ですか?」
5)誤導するQ 「(殴ったと言ってないのに)被告人を殴った時、どこにいましたか?」
6)一方通行の連打Q 「どう思う?」「かわいくない?」「これもよくない?」
7)刑事風の尋問Q 「どうして?」「何が?」「理由は?」「で?」
ワルセブンを振り返ると、これまで無意識にしていたことに気がつきました。
私の場合は、圧倒的に1の「否定語の入るQ」が多いと思います。友人とケンカした時は、2の「即否定Q」も使っていたはず。「そんなわけないでしょ?」みたいに。尋問みたいだと言われた時は、7の「刑事風Q」だったのでしょう。自問自答する時には、4の「脳に負担がかかるQ」をしてしまい、答えられない自分に落胆することもしばしばありました。
想像以上に、悪い質問はナチュラルに染み込んでいました。
加えて、NGな悪アクションも一つあります。
悪い!アクション
それは、「話題のsteal (盗み)」です。
相手と話している最中に、全く異なる話題に急に切り替えること。
例:A「最近どこか行きましたか?」
B「はい、彼氏と海外に。そういえば彼氏できました?」
質問には答えたが、相手に聞かずにすぐ別の話題にしてしまった例です。
2の「回答直後に否定するQ」にも共通点がありますが、相手の話を否定したり、話題を横取りしたりして、自分の話ばかりするのは良くありません。自己顕示欲が満たされるだけで、相手とは気持ち良くはないし、相手とのセッションから何も得られていませんから。
(女性はコロコロと話題が変わると言われるが、話題のスティールになるのだろうかとちょっと疑問)
<悪い質問とは>
相手が不快に思う感情を刺激してしまい、答えたくないと思われてしまう質問
良い質問の5つのキーワードと2つのカタ
では、良い質問をするためカタを学んでいきましょう。
基本の質問 5つのキーワード
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(だれが、だれと)
- What(何を)
- How(どのように)
ここで一つ重要なポイントがあります。
良い質問をしたいなら、絶対に「Why」と聞いてはいけません。
なぜ、Whyと聞いてはいけないのか?
なぜなら、論理的に答えなければならないので、脳が苦痛だからです。
原因を究明するようなKAIZENが目的なら効果的なWhyですが、人とのコミュニケーションにおいて使うと、脳がプレッシャーを感じて会話が止まります。
自分が良かれと思って積極的に使っていた「Why」が、実は相手にとって苦痛だった。
そう知った当初は、ショックが大きくて、この事実を受け入れがたかったものです。
相手が苦しくなるWhyの質問は避けよう。
Whyばかり聞く人は、質問を作るのが下手な人、というわけです。
もしWhyと聞きたくなったら、ぜひ他の言葉で言い換えてください。
例:なぜ彼を選んだの? (Why)
→ いつから気になっていたの? (When)
→どんなところが魅力に感じるの? (What)
→どちらから気持ちを伝えたの? (Who)
→デートはどこに行ったの? (Where)
また、質問のカタは大きく2つあります。
良い質問をするためのスタイル
よい質問のカタと同じくらい大切なのが、質問をする姿勢。雰囲気や環境づくりです。
人間は自尊心のかたまりで、上から目線で言われると反抗したくなるそう。
そのため、よい結果を導くためには、言葉だけでなく態度も影響するというわけです。
相手から好意を持たれる方法や苦手な相手への向き合い方など、脳の特徴を踏まえて法則を知っておくと、良い質問の実現率が上がるでしょう。
返報性の法則(もの、情報、好意、敵意)
返報性とは、何かもらったら返そうとする習性のことです。
例えば、試食したら購入した方がいい気になったり、年賀状をもらったら寒中見舞いを返した方がいいかなと思ったりしますよね。好意も同じです。好意を向けられると、好意を返そうとします。積極的にこちらから示すことで、相手から返ってくる反応や情報は変わります。
好意を持たれる6つのポイント
1) 外見の魅力(服装や表情)
才能や知性がありそうと思われると、好意は増す
2) 類似性(似ているものに好意と持つ)
共通の出身地や趣味などを探す、行動をミラーリングする
3)賞賛(その人らしい魅力的な部分をほめて、自尊心を満たす)
4)単純接触(よく知るものには安心感を持つ)
よく合う、よく知る、そばにいる
5)協同(同じ目的を持つ)
対立する人や何かを置いて、同じ目的に向かう仲間にする
6)連合(できごとと相手を意図的に結びつけてしまう)
良い記憶を思い出す質問+その記憶+相手→良いイメージ
反対に、悪意を持って接すれば、同じよう返ってきます。
そうは言っても、嫌いな人や苦手な人に向かうモヤモヤとした感情をぬぐうのは簡単ではない…。マインドセットへのコツは、「自分に欠けていて、相手が持っているよい部分は何か」と尊敬できるポイントを見つけること。
やってみたところ、確かにどんな人にもありました。
そうして苦手意識をフラットにしたら、まず相手の感情を刺激します。
(先に述べたように脳は、感情→理性の順に動くからです)
人間は、自尊心を満たす時、または自尊心を守ろうとする時に行動に繋がるそうです。
●自尊心とは
自分が自分をどう思うか、感じるか。自分が有能であるといういわゆる自信と、自分に価値があるという自尊。セルフエスティーム。
●自尊心が満たされる時
話をよく聞き観察された上で、自分らしさを褒められた時。褒め手の視点が光る褒め言葉が響く。学歴、肩書き、勤め先など一般的・表面的なことを褒めるのは良くない。センス、アイデア、判断、行動、態度など、その人自身の素晴らしいところを褒める。
●自尊心を守ろうとする時
ネガティブフィードバックを拒否する時。自分の欠点をごまかそうとする時。自分より劣る人たちと比べて安心しようとする時。
自分の欠点を受け入れたくないと思う時が自尊心を守ろうとする時ですが、成長意欲の高い人は、痛みも自発的に引き受けようとするので、今回の良い質問をするための土壌づくりにおいては「自尊心を満たす」攻め方がいいと思います。
そのほかにもある会話のコツを記します。
良テク1:会話のブーメラン
相手が聞いてきた質問は、実はその人が聞いて欲しいこと、という心理です。
「最近どこか行ったの?」と聞かれた時、あなたの言った場所を知りたいのではなく、その人が最近どこかに行ったからその話がしたい、ということ。話題を返してあげましょう。
良テク2:ドア・イン・ザ・フェイステクニック
わざと大きな依頼をしておいて、断らせてから、小さい依頼(本当の狙いはこっち)を聞いてもらう返報性の応用テクニック。3から4段階あるとより良いそう。
良テク3:一貫性の法則
いったんある行動をとると、矛盾した行動をとりにくくなるという法則。大きなプロジェクトに入りたいけど許してもらえない時、まずは仮提案していいかどうかを聞き、イエスをもらう。それをきっかけに、同じように繰り返し、どんどん存在感を増していくという下剋上スタイル。のし上がっている人は使っているテクニックではないかと思います。
良テク4:ティッピングポイント
相手の話が盛り上がる瞬間のことです。相手の自信のある話題や関心のある話題、心地よい話題にヒットしたら、見逃さずにその点から会話を広げていきましょう。
<良い聞く姿勢とは>
自分の目標にたどり着くために整えるのが、良い姿勢。
相手の心をほぐすために、好意を持ってもらう工夫をしよう。
良い質問のロードマップ
良い質問をするために、相手のパターン別に流れを想像しました。
ケース1:苦手な人
1)質問の目的を明確に立てる(何が聞けたら or どう思われたら達成なのか)
2)「自分に欠けている相手のすごいところは?」と自分に問いかけて、尊敬ポイントを探す
3)見つけた尊敬ポイントをもとに、自尊心を満足させる褒め言葉を伝える
4)オープン質問をして、相手の話しやすいティッピングポイントを探す(Whyなし)
5)クローズド質問で目的に寄せていく
ケース2:はじめましての人
1)質問の目的を明確に立てる(何が聞けたら or どう思われたら達成なのか)
2)好意を持たれるポイント6を活かして、自分の好意や情報を先に伝える
3)オープン質問をして、相手の話しやすいティッピングポイントを探す(Whyなし)
4)見つけたら深掘り。だんだんクローズド質問で目的に寄せていく
ケース3:すでに知っている人
1)質問の目的を明確に立てる(何が聞けたら or どう思われたら達成なのか)
2)質問にかかわる自尊心を満足させる褒め言葉を伝える
3)目的に応じて、オープン質問(Whyなし)かクローズド質問を使う
<良い質問の流れ>
質問する目的を明確にし、相手の気持ちをほぐす。
その後、関係性に応じて質問の方法を合わせる。
質問力を鍛えるトレーニング
この本を読んで、自分の質問力を鍛えるためのオリジナルトレーニング方法を記載します。
1)Whyを完全に禁止する
自分が思っている以上に、簡単に「why」を口にしていました。
まず、この癖を治さないとダメだと痛感しています。
いっぺんに全部はできないから、私の場合は、まず「why」を言い換える癖をつけます。
2)友人と話す際は、質問の目標を立てる
大きな舞台に挑む前に、まずは身近なところから。
友達は対価に関係なく関わってくれるとっても大切な存在です。
自尊心を高め合うことは、お互いのためにもなるし、まずは近い関係をもっとよくすることからやろうと思っています。
3)上手なインタビュー音声を文字にして、プロの質問の仕方を研究
上手にファシリテートしている人が、どんな質問を投げかけているのか。
これまではインタビュイーに焦点を当てていましたが、インタビュアーの質問に目を向けてみます。
きっと、テーマや関係性によっても質問の仕方は異なるはずで、その違いを発見できたりしても面白そうです。
まとめ
Whyは、プレッシャーであり、苦痛である。
非常に衝撃的な一言でしたが、ズバリ言い切ってくれたことで、変わらなければならないと自分に向き合うことができました。よい質問の仕方と姿勢が習慣になるまで、気をつけて取り組み続けようと思います。
一ヶ月に一度、この書評に戻ってこよう。初心忘れないために。