「ない」からはじめて気がついたこと

自由に生み出して、と言われると、全然うかんでこない。でも、「・・・ない」「・・・ない」というないない条件からスタートすると、シナプスがわらしべ長者的に繋がっていき、新しいものができたり会えたりする。「ない」は宝。ないから見つかる身に付く

ホンメモ『僕たちはファッションの力で世界を変える(ザ・イノウエ・ブラザーズ)』

この本は、デンマークで生まれ育った日系二世兄妹のドキュメンタリーだ。

彼らは、ファッションデザイナーとヘアデザイナーの仕事をしながら、

私財と時間を投じて、アンデス地方のアルパカ製品を生み出し、

エシカルなビジネスによってアンデス地方の人々の暮らしの向上を目指している。

 

アブラハム・マズローの欲求五段階説は知っているだろうか。

人間の欲求を五段階に分けたアメリカの心理学者だ。

1970年にこの世を去っている。

 

彼は、生理的欲求、安全の欲求、愛と所属の欲求、承認欲求、自己実現の欲求の5つに分けた。しかし、晩年のマズローによると、6番目の欲求があるとされた。

それは、超越的な自己実現の欲求だ。

 

ソーシャルビジネスを行う人は、6番目の欲求ではと思うかもしれないが、

私はもっと根底の欲求で動いているような気がしてならない。

 

それまでの自分は五段階の欲求を満たすために行動してきた。

でもある日、別の世界を知る。

自分がこれまで信じていたことではない世界だったり、

今よりしっくりくる世界だったり、

パラレルワールドのように別の世界が視界に広がる。

 

そうすると、欲求段階はコロンコロンと降っていく。

そして、その世界の欲求を満たそうと動き始める。

 

最初は戸惑う。あれ? なぜ、こんなに衝動的に動くのだろうか。

慈善なのか? 余暇? やることがない?

 

いいえ、そうではない。

 

その出会った世界こそが、新しい世界で、発見だったんだ。

だからそこでの欲求を満たそうとする。その場所をよくしなければと思う。

そうしないと、自分が生きにくいから。

 

そんな並行人生を歩み始めた二人の、行ったり来たりの人生。

たくさんの共鳴する言葉が出てきたので、記録しておく。

 

P71

資本主義が高度に発展した欧米社会では、“自分さえよければいい”という自分本位の考え方が蔓延している。そして弱肉強食が当たり前の、勝ち負けがはっきりと分かれる競争社会を生き抜くためには、他人を蹴落とすことを厭わない人間も少なくない。でも、人間はひとりじゃ生きていけないし、他者を思う気持ちがないと利害関係だけに振り回されたり、他人を信用できなくなったりして次第に息苦しくなってしまう。

その証拠に、「周りの人たちが喜んでいるとき、自分がいちばんうれしい」とシンプルに言える彼らの方が素敵だし、ずっと幸せそうじゃないか。

 

P104

“Style can't be mass-produced...(スタイルは大量生産できない)”というメッセージは、「ザ・イノウエ・ブラザーズ」のコンセプトでもある。これは、1970年代後半のニューヨークのスラム街で、グラフィティアーティストたちが当時の商業的なアートシーンに対する象徴的なアンチテーゼとして、よく使っていた言葉だった。 

 

 

P133

大量生産・大量消費社会への反対意見と言うと、たいていそれをとめたら企業活動が成り立たず、雇用を維持できないし、税金も払えなくなるといった議論に行き当たる。そして、消費しなければ経済が衰退するという声が上がる。でも、少し立ち止まって考えてほしい。必要でない斧を必要だと思い込んだり、ショッピングが気晴らしであったり、ものがあると安心できたり……。本当は買っているのではなく、買わされているのではないか。お店に、コマーシャルに、そして社会に。

 

 

P136

問題なのは、それしかない、それがベストだと思い込んでいる社会のあり方であり、自分たちの生き方なんだ。ルールを変えて、システムを新しく作り直さない限り、この悪循環はどこまでも続いてしまう。

問題はとてつもなく大きい。闘う相手も見えない。でも父親が、いつも口癖のように言っていた。「人生の分岐点が訪れたら、迷わず困難な方へ進め」と。そして「失敗を絶対に恐れるな」と。

“Style can't be mass-produced...”。自分に負けそうになると、聡は決まってその言葉を思い出す。

 

P171

世界一のアルパカ・コレクションをつくり、ビジネスとしてきちんとドライヴしていかなければ、社会貢献というスキーム自体が回っていかない。そこに理想と現実のバランスがあり、日々の苦悩と葛藤が横たわっていた。ビジネスである以上、相手に最大限の敬意を払うのは当然だ。でも、そこに上下関係はないし、そんな気持ちも毛頭ない。チャリティではないというのは、そういった情けや哀れみのメンタリティが少しでも出てしまうと対等な関係が崩れてしまうからだ。それは“おごり”だと思う。同じ人間として、フラットな立場で接するから腰、生まれてくる信頼の絆がある。貧しいから、恵まれていないから、自分たちよりもちっぽけでかわいそうな存在だなんて考えるのは絶対に間違っている。

 

P274

ほとんどの人たちは、法の下での“平等”を疑いもせずにいる。だが、この平等という考えが、置かれた立場でによって大きく変わることを、多くの人たちは理解していない。しかも、ポジティヴとネガティヴのどちらに振れるかは、そのときの状況にも左右されるから厄介だ。何が正しくて、何が正しくないかの判断は、簡単なようでいてとても難しい。例えば、僕たちが当たり前だと思っている価値観は、地球上どこでも通用するのか? 一部の権力者や巨大資本のプロパガンダによって歪められている可能性だってあり得るし、経済成長至上主義の社会では先進国の人たちが考える“自由”や“平等”の為に、知らない間に、世界のどこかで誰かが搾取されていることだってある。残念ながら、目の前の常識を一度疑ってみないことには、本当のことがなかなか見えてこないのが現実だ。

 

P300

いろんな学校から、ソーシャルビジネスについて“どうやればいいのか”を講演して欲しいという依頼は多い。でも、今は全部断っている。命がけでやるビジネスに手取り早いノウハウなんて存在しないし、他人から教わって覚えるものじゃない。問題がなんなのかー自分の頭で考えて、悩んで、苦しんだ末に、答えを見つけ出さなければ、意味がないからだ。答えは一つだけじゃないし、やり方だって10人いれば10通りある。正解になかなかたどりつけなくても、考え続けることの方が大切なんだ。

 

イノウエ・ブラザーズのたくさんの葛藤が伝わってくる。

それでも自分を奮い立たせて前に進んできた。

力強い兄弟も、膝から折れることもあっただろうが、

それを助けたのは友人ではなく、偉人だった。

ジャンミシェル・バスキアジミ・ヘンドリックスボブ・マーリージョン・レノンボブ・ディランジェームズ・ブラウン、マイルス・ディビス、ホセ・マルティ、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアチェ・ゲバラ、マハトマ・ガンディーなど、反骨精神で不公平に立ち向かった過去の人々の声を聞いて、自分を定めていた。

 

「目の前」にあるものを、自分の中で自分で決めた。

前をみる、遠く遠くの前を見る。

 

この兄弟の生き様が、本当にかっこいい、

生きるとは、何何だろうか。

 

飲んで、寝て、起きて、飲んで、寝て、ぐうたら過ごすことでもいいが、

生きるとは、自分の信じるものを見つけることができ、

それに没頭できることかもしれない。

 

一生かけて、知ること。世界を。地球を。

自分の信じるものがある、という状況は、

生きていると感じられる出会ってしまった状況何だろう。